魔女の宅急便 - レビューと感想

魔女の宅急便

  • 作品名 : 魔女の宅急便
  • 公開年 : 1989年
  • 監督 : 宮崎駿

物語全体

親元を離れて別の街で暮らす事になったキキ(13歳の女の子)の旅立ち、新しい街での出会い、生活、仕事、挫折、克服などが描かれています。筋書きの展開だけを見るとどこにでもありそうな普通のお話だと言えますが、そこに魔女(キキの場合は空を(実際に)飛ぶ能力)と言う要素を加えた事による発展が見られます。

極普通の日常に幾つかの特別な要素を持ち込み、それを一つの軸として発展、展開を見せて行くお話しは姫は嫌いではありません。そう言う点では「魔女の宅急便」は姫の好みからは逸れていないと言えます。

魔女

「魔女」に就いては姫が魔女と呼んでいるものとは違っていましたが、中世にキリスト教会の事情を含みながら作り上げられた魔女像を元に負の要素(悪魔崇拝、サバト、教会による迫害など)を取り除いた形(もしくは過去にはそれがあったが現在は残っていないと言う形)で描いているのだろうと理解し、序盤からそちらに合わせて作品を見る事が出来ました。

昔の魔女は実際には薬物(飛行軟)を用いて内的飛行を行っていたようですが、「魔女の宅急便」の中での魔女は(魔女像の噂通りに)箒に跨って肉体的に空を飛んでいたので驚きました。

キキ、キキのお母さん、キキが旅立ちの日に会った魔女...どれも女性の魔女ばかりでしたが、この「魔女の宅急便」の世界には男性の魔女はいないのかが気になりました。

魔女になる子は13歳になったら修行のために家を出る、既に他の魔女がいる街には住めない...と言うのは独自の設定だと思います。なぜ家を出なければならないのか、なぜ他の魔女がいる街には住めないのかは分かりませんが、話を作る上での都合かも知れません。

お絵描きのお姉さんが「魔法ってさ、呪文を唱えるんじゃないんだね。」と聞いた際にキキは「うん。血で飛ぶんだって。」と答えていましたが、これには違和感がありました。魔術師、魔女には血など関係無いのですが、物語の中では違うようです。

お絵描きお姉さんとの会話の内容から物語内での魔女は呪文は唱えないものなのかと思えば、そう言う訳でも無いようです。キキがデッキブラシに跨って飛ぶ場面では「飛べ」、「もっと速く」などの呪文を唱えていましたので。姫も呪文は唱えたり唱えなかったりです。

黒猫のジジ

内容とは関係ありませんが、猫好きの姫としてはジジが可愛かったのが良かったと思います。

最初は体格が小さ過ぎるように思いましたが、エンディングでは大きくなっていたので、やはり、最初は子猫だったようです。

箒の柄に掴まるジジの力の強さには驚きました。ナウシカの肩に掴まるテト並の力です。

箒の自作

キキはお母さんに貰った箒が折れてしまった後、箒を自作していましたが、これは見習わなければならない態度だと思いました。本来、魔女にしても魔術にしても魔術道具は自作が基本です。しかし、姫は物作りが得意とは言えず、魔術道具の自作をついつい怠ってしまいます。刃物に関しては一人でいる時は持たせて貰えません。姫には箒を自作しているキキの姿が羨ましく見えました。自分もそうなりたいと。

お父さんや奥様など...素人のような声がところどころで気になり、内容に集中出来なくなる場面がありました。

音楽

背景音楽では印象的なものが数個ありました。ただ、楽器の使い方に上手とは言えないところがあるのは(ジブリ作品では時折見られる事であり)仕方が無いにしても、この作品ではそれが(音楽に意識の行きやすい場面や映像であったせいか)浮き上がってしまっている部分があり、少し気になりました。これに就いては音楽に十分な意識を傾けさせない演出、気にならなくさせる(浮き上がりを防ぐ)演出もあったと思われるだけに残念です。(きちんとした人が曲を書いていると思われるので全ては姫の気のせいなのだとは思いますが。)

気になったところ/不思議に思ったところ

宅配便では無く宅急便と言う言葉が使われていました。聞き慣れない言葉であり、特殊な言葉なのかも知れませんが(宅配と急便の合成語?)、恐らく、通常よりも早く届く宅配の事なのだと思います。

キキが熱を出して具合が悪くなった際にオソノさんは「ただの風邪よ。」と言っていました。そして、前日、雨に濡れて帰って来た後、きちんと体を拭かなかったためであると。しかし、風邪はウィルスの感染によって起こるのであって、濡れたまま体を拭かなかっただけでは風邪にはならないように思います。恐らく、どこかでウィルスに感染した事が直接の原因なのだと思います。

キキが頬杖をつきながら食事をしている場面には驚きがありました。姫は頬杖はつきませんし、姫の周りには頬杖をつく娘もいますが、その状態で食事をしている人を見た事がありませんので(人前だからかも知れませんが)。そのような事が許されるのかと...思ってしまいました。ただ、頬杖をつきながらの食事が許されるなら(姫の環境でそれが許されるとは思えませんが)、どこかで1回くらいは挑戦してみるのも良いかも知れないと思いました。周りの人に心配を掛けないように一人の時にでも。

キキは道にいたおじさんから借りたデッキブラシをエンディングでも乗って飛んでいました。直ぐにおじさんに返却するものだと思っていたのですが、そうでは無かったようです。想像になりますが、返そうとしたけれど返さなくて良いとおじさんが言ったのかも知れません。

「魔女の宅急便」の評価 : 23点

旅立ちから始まり、新しい街での生活、人との出会い、訪れる困難とその克服...限られた時間内に収めなければならない中では良く纏まっている作品だと思います。だた、どの場面も少し物足りなく感じられましたし、夢中になって見る事が出来たか、面白かったか、楽しかったかと言うと、そう言ったものは殆ど感じられませんでした。お話の形式が姫の好みの一つには合っていただけに期待しながら見ていたのすが、それが(その勝手な期待が)叶えられずに終わったのは残念でした。

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