平成狸合戦ぽんぽこ - レビューと感想

平成狸合戦ぽんぽこ

  • 作品名 : 平成狸合戦ぽんぽこ
  • 公開年 : 1994年
  • 監督 : 高畑勲

物語全体

全体的に薄く退屈な内容となっていて最初から最後まで興味が沸きませんでした。しかも、時間が2時間程度と長く、興味の無い中で過ごすその時間は実際の時間よりも長く感じられました。作品の長くするのであれば単に時間を増やすだけでなく、きちんとした内容を用意してからにして欲しかったです。それならば2時間は長いとは感じなかったと思います。それが無理だったならせめて時間を短くして欲しかったです。視聴者の事を考えてくれているのであれば。

見せ場

劇中には見せ場らしい見せ場がありませんでした。ただ、これは推測になりますが、「秘術 妖怪大作戦」は恐らく見せ場の一つとして用意された場面であったのでは無いかと思います。それは盛り上がりが感じられず、見せ場として働いていなかったため中々気が付きませんでしたが...。また、他にも姫が気が付かずに見落としているだけで見せ場として挟まれている場面は幾つかあったのかも知れません...。(全体的にお話(テーマやその見せ方)が退屈なので見せ場を置いたとこで作品の評価が激変するような事はありませんが、それでも視聴者の退屈さを少しでも解消するために)劇中にもう少しはっきりと分かる(きちんと盛り上がる)見せ場を用意しても良かったのでは無いかと思います。

狸と人間

劇中の最後の方では狸の内の1匹が人間の事を「人間の皮を被った狸」と表現していましたが、劇中を見るとそれとは逆に(どちらでも良いのですが)「狸こそが狸の皮を被った人間」であったように感じられました。狸に「人間の皮を被った狸」と言う言葉を使わせているところからして、恐らく、狸を「狸の皮を被った人間」のように見せたのは十分な意図があっての事であり、それを使って「弱い側にいる人間」や「時代の波に抗いながらも抗い切れずに押し流されて行く人間」、あるいは「分かり合えない相手(「自然」もそうですが、劇中での狸は「自然の代表」には見えないので、ここでの「分かり合えない相手」は「人間」が妥当か。)」を表したのでは無いかと思います。

そう考えるとこの作品は「狸対人間」の形で描かれた「人間(弱い者)対人間(強い者)」のお話だったと言えると思います。狸と人間の対立を通して人間世界での弱い者と強い者の対立、文明の差のある人種による対立まで見えるように図った作品であったと。(勿論、姫がそう感じただけであり、的外れの可能性も多分にあります。)

ただ、狸を使って何を表現しているにしても(人間の「勝手」の矛先に置かれた自然や動物の代理にしても、強い者(流れ)に追いやられる弱い者の代理にしても、単なる狸にしても)上手く表現出来ているようには思えませんでした。恐らく、「狸」は人間の傲慢さや勝手さを示すために用意された存在だったのだとは思いますが、上手く使えない(表現出来ない)のであればそのような表現方法は避けた方が良かったのでは無いかと思います。

作り手に踊らされる狸

(人間側もそうですが特に)狸側からは「作り手の都合」によって動かされている気配が強く感じられました。そのため視聴中は最初から最後まで気持ち悪さを感じ続ける事になりました。

恐らく、「物語」の作り方が上手な人であれば作品内から「作り手」の気配(特に「作り手の都合」の気配)を上手く(完全に消す事は難しいにしても、余り感じさせない程度に、あるいは必要な範囲で残しながら)消す事が出来るのだろうと思います。ですが、この作品ではそれが全く出来ていないように思いました。

これに就いてはもしかすると意図的にそうしているのかも知れません。敢えて作り手の気配を隠そうとしていない、あるいは意識的に作り手の気配を強く見せていると言う事も考えられます。しかし、作り手の気配だけならまだしも(それにしても強過ぎますが)、それと一緒に作り手の都合が強く見えているのはどうかと思います。作り手の都合は上手く(出来る巧みさがあるのであれば)隠した方が良かったのでは無いかと思います。

遊び心

劇中には、短時間ですが、「キキ(魔女の宅急便)」、「マルコ・ロッソ(紅の豚)」、「トトロ(となりのトトロ)」、「岡島タエ子(おもひでぽろぽろ)」が登場している場面がありました。作品の本筋とは関係無いところでの「過去のジブリのキャラクター」の登場ですが、作り手側の遊び心だったのだと思います。

こう言った遊び心は、姫が余り気が付かないだけで、その他も色々と含まれていそうでした。(例えば、警邏中の警官が狸に化かされた際に直ぐに拳銃を(無駄に)発砲していましたが、それもそうだったのでは無いかと。)

素人のような声ばかりで台詞がとても聞き取り難いところがありました。声の奇妙な感じが気になって内容に集中出来ないところもありました。

「平成狸合戦ぽんぽこ」の評価 : 1点

全体を通じて興味が全く沸きませんでしたし、劇中には盛り上がるような場面も無く、退屈な時間ばかりでした。

時間に就いては、この内容での2時間と言うのは長過ぎたのでは無いかと思います。「2時間」と言う時間自体は1本の映画としては決して長過ぎると言う訳では無いと思うのですが、内容の薄さ、(姫としては)退屈なテーマ、盛り上がり欠ける展開での「2時間」は「長過ぎる」と感じてしまいます。全体的には30分程度の長さで纏めるのが丁度良かったのでは無いかと思います。逆に「2時間」掛けて見せたいのであれば視聴者の興味を失わせないような工夫をもっと色々とすべきだったと思います。姫の場合は開始早々で興味を失ったのですが、それは最後まで盛り返す事がありませんでしたし、途中からは退屈さとその長さに苦痛を感じるようになり、後はただただ早く終わる事を願うばかりでしたので...。

見終えて時間を無駄にしたように感じる作品は(ジブリ以外の作品も含め)これまでにもありましたが、その中でもこの「平成狸合戦ぽんぽこ」はその感覚を特に強く感じた作品でした。狸が人間と戦っている間、姫は退屈と共に何度も襲い掛かって来る眠気との戦いでしたし、退屈な内容にどこまで耐える事が出来るかを「作り手」側から試されているようにさえ感じました。もしかすると自己満足が先に立って視聴者の事を考えていないのでは無いか...と言うような誤解までしてしまいそうになりました。1点です。

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